「残業を減らしたい」
『サボりたいだけでしょ?』
「大勢より少人数の方が落ち着く」
『友達いないの?』
「貯金だけじゃなく投資も考えた方がいい」
『ギャンブルにハマる気?』
どれも、なんだか話がすり替わっていますよね。これは「ストローマン論法(藁人形論法)」と呼ばれる詭弁のひとつです。相手の主張を勝手に極端なものに置き換えて、それを叩くという手法になります。
この論法、実は日常会話だけでなく、投資やFIREの議論でも頻繁に登場します。たとえば、こんな話を聞いたことはないでしょうか?
「インデックス投資は退屈だから儲からない」
「FIREは怠け者のやることだ」
知らず知らずのうちに、この論法に巻き込まれ、議論が変な方向に進んでしまうこともあります。
この記事では、「ストローマン論法とは何か?」「どんな場面で使われるのか?」「どう対処すればいいのか?」を分かりやすく解説します。これを知っておけば、理不尽な理屈に惑わされず、冷静に判断できるようになるはずです。
ストローマン論法の罠に引っかからず、賢く生きるコツを一緒に学んでいきましょう!
ストローマン論法とは?
ストローマン論法って聞いたことありますか? そもそも、「ストローマン」って何かわかります?
ストローマン(straw man)とは、英語で「藁人形」という意味です。日本語では「藁人形論法」や「かかし論法」とも呼ばれます。……といっても、呪いの藁人形とは違いますよ、安心してください(笑)
要するに、藁で作った偽物の人形を立てて、それをボコボコに殴るようなもの。実際の相手ではなく、自分が勝手に作った“弱い相手”を攻撃するのが、この手法のポイントです。
具体的には、こんな会話を想像してみてください。
Aさん:「子供を道路で遊ばせるのは危険だから、やめた方がいいよ」
Bさん:『子供を家に閉じ込めておけだなんて、ひどい意見だ!』
Aさんは「道路で遊ばせるのは危険」と言っただけで、「家に閉じ込めろ」とは一言も言っていません。でも、Bさんは勝手に極端な解釈をして、Aさんの意見を否定しています。
これがストローマン論法です。相手の主張を極端なものに置き換え、攻撃しやすくすることで、あたかも自分が正しいかのように見せる手法なのです。
こうした議論のすり替えは、日常の会話だけでなく、投資やFIREの話題でも頻繁に使われます。次の章では、具体的な事例を見ていきましょう。
投資でよくあるストローマン論法
個別株 vs インデックス投資
「インデックス投資なんて退屈で儲からない」
個別株派とインデックス派の議論はよくありますが、ストローマン論法が使われることも少なくありません。
Aさん:「長期的に安定して増やしたいから、インデックス投資を選んでるよ」
Bさん:『インデックス投資なんて退屈だし、大儲けできないじゃん!そんなの意味あるの?』
Aさんは「長期的に安定して増やす」と言っているだけで、「一生低リターンでもOK」とは言っていません。でも、Bさんは勝手に「大儲けできない=意味がない」という極端な話にすり替えています。
投資の目的は人それぞれ。リスクを取って大きく増やしたい人もいれば、安定的に資産を増やしたい人もいます。「インデックス投資を選ぶ=退屈で儲からない」というのは、まさにストローマン論法の典型例です。
長期投資 vs 短期投資
「短期投資なんてギャンブルと同じだろ?」
短期投資と長期投資のどちらが良いか、という議論もよくあります。ここでもストローマン論法が登場します。
Aさん:「短期投資で大きなリターンが出るように、多少のリスクはとっているよ」
Bさん:『リスクをとって短期投資なんて、ギャンブルと同じだろ。大損するよ』
Aさんは「リスクを取って大きなリターンを狙う」と言っているだけで、「無計画に投資する」とは言っていません。でも、Bさんは「短期投資=ギャンブル」という極端な話にすり替えています。
確かに、短期投資はリスクが高くなりがちですが、適切な分析や戦略があれば成功する可能性もあります。一方で、長期投資が絶対に安全というわけでもありません。それぞれの投資スタイルにメリット・デメリットがあるのに、単純に「短期投資=ギャンブル」と決めつけるのは、ストローマン論法の罠にはまっていると言えるでしょう。
S&P500 vs 全世界投資
「S&P500しか勝たん!全世界投資なんて意味ない」
S&P500と全世界投資のどちらが良いかは、投資家の間でよく議論されるテーマです。ここでもストローマン論法が飛び交うことがあります。
Aさん:「リスク分散のために、全世界株に投資しているよ」
Bさん:『全世界投資なんて意味ないよ!結局S&P500が最強なんだから、分散なんて無駄でしょ?』
Aさんは「リスク分散のために全世界投資を選んでいる」と言っているだけで、「S&P500がダメ」とは言っていません。でも、Bさんは「S&P500の方がリターンが良い=全世界投資は意味がない」という極端な話にすり替えています。
逆に、こんなパターンもあります。
Aさん:「S&P500は長期的に好成績だから投資しているよ」
Bさん:『アメリカ株だけに投資するなんて危険すぎる!世界経済全体を無視するなんて、リスク管理ができていない証拠だよ』
Aさんは「S&P500は長期的に良い成績を出している」と言っているだけで、「全世界株はダメ」とは言っていません。でも、Bさんは「アメリカ集中=世界のことを無視している」と極端な話にすり替えています。
S&P500と全世界投資のどちらが良いかは、投資の目的やリスク許容度によって変わります。一方を選ぶことが、必ずしももう一方を否定することにはならないのですが、ストローマン論法が使われることで、不毛な対立が生まれてしまうのです。
そして、そんな争いを横目に、「S&P500とオルカンを混ぜるやつは馬鹿」派も静かに主張を続けています……
FIREの誤解
「FIRE=働かずに遊ぶだけの人」
「FIRE? ああ、仕事をしないで遊んで暮らす怠け者のことね」
FIRE(Financial Independence, Retire Early)の概念は、日本でも少しずつ知られるようになってきました。しかし、いまだに誤解されることが多く、ストローマン論法の標的になりがちです。
Aさん:「FIREを達成したから、会社を辞めて自由な生活をしているよ」
Bさん:『仕事もせずに遊んで暮らすなんて、社会に貢献する気はないの?』
Aさんは「会社を辞めて自由な生活をしている」と言っただけで、「一生遊んで暮らす」とは言っていません。でも、Bさんは「FIRE=何もしない」という極端な話にすり替えて、批判しています。
実際には、FIREを達成した人の多くが、投資や副業を続けたり、自分のペースで働いたりしているものです。「仕事=会社勤め」と決めつけ、FIRE=遊んでいるだけと誤解するのは、典型的なストローマン論法と言えるでしょう。
「FIRE=もう一生お金の心配なし」
「FIREしたなら、一生お金に困らないんでしょ?」
もう一つの誤解は「FIREを達成したら、もうお金の心配はゼロになる」というものです。
Aさん:「FIRE後も資産を管理しながら生活しているよ」
Bさん:『FIREしたなら、一生お金に困らないんでしょ?なんで資産管理なんてするの?』
Aさんは「FIRE後も資産管理をしている」と言っただけで、「完全にお金の不安ゼロ」とは言っていません。でも、Bさんは「FIRE=金銭的に100%安心」という極端な話にすり替えています。
FIREを達成しても、投資環境の変化や支出の増加など、お金の管理は引き続き必要です。むしろ会社員時代よりも、資産の増減に敏感になることさえあります。FIRE=お金の心配が完全になくなるというのは、現実とかけ離れた誤解なのです。
まとめ:ストローマンに惑わされず、冷静に判断しよう
ストローマン論法は、相手の主張を極端に歪めて攻撃する手法です。これは、日常会話から投資、FIREの議論に至るまで、あらゆる場面で使われています。
この記事では、こんな例を見てきました。
- 「残業を減らしたい」 → 『サボりたいだけでしょ?』
- 「FIREを達成した」 → 『遊んで暮らすなんて社会不適合者だ!』
- 「S&P500と全世界投資、どっちがいい?」 → 『どっちも中途半端に持つのは馬鹿』
どれも本来の主張をねじ曲げ、極端な意見にすり替えています。こうした論法に引っかかると、冷静な判断ができなくなり、無駄な対立を生んでしまいます。
では、どうすればストローマン論法に惑わされずに済むのでしょうか?
ストローマン論法に騙されないためのポイント
▶ 相手の発言を正確に理解する(極端な解釈をしない)
▶ 議論が極端に走っていないかチェックする(すぐに白黒つけようとしない)
▶ 「本当にそんなことを言った?」と冷静に問いかける(すり替えに気づく)
ストローマン論法は、気づかないうちに自分が使ってしまうこともあります。ネットやSNSの議論でもよく見かけるので、「これはすり替えられていないか?」と一度立ち止まるクセをつけるのが大切です。
最後に、S&P500とオルカンを両方持っている僕としては、「どっちが正しいかなんて気にせず、自分の好きな投資をしたらいいんじゃない?」と言いたいところですが……これもまた、ストローマン論法の標的になりそうですね(笑)
冷静な判断力を持って、賢く生きていきましょう!
Enjoy FIRE!
次回の投稿もお楽しみに!
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